新型コロナ禍で激変する生活環境。いまこそ準備を 勤務医のための 人生100年時代のお金計画

新型コロナ禍により、病院経営や医師の収入にも影響が生じている。一部には、医師不足で「高収入・生涯職・売り手市場」だった環境が、史上初の買い手市場に転換するとも言われている。そうした状況において、医師はライフプランや資産形成についてどのように考え、行動すべきか。教育費や老後資金の準備も含め、人生100年時代のお金計画について多くの医師に助言を行っている、お金の専門家に話を聞いた。

家計の見直し相談センター代表 ファイナンシャルプランナー・CFP認定者
藤川 太
生活デザイン株式会社代表取締役社長。自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事したのち、ファイナンシャルプランナーに。2001年、日本における個人相談の普及を目指し、共同で「家計の見直し相談センター」を設立。3万件を超える相談に対応してきた。資産運用、保険、不動産投資など、幅広い分野に精通。新聞、雑誌、テレビ、講演などで活躍。著書多数。

藤川 太氏 写真

収入不安を感じる医師は少なくない。
新型コロナ禍におけるお金のセオリーを知る

預金を多めに確保。
長く働く、2人で働く

新型コロナ禍により、医療業界も大きな影響を受けている。患者の受診控えや、非常勤勤務の需要低下などで、収入が減っている医師も少なくないとみられる。

医師からのお金の相談を多く受けているファイナンシャルプランナーの藤川太氏はこう話す。

「開業医だけでなく勤務医にも、病院の業績や自身の収入に不安を抱く人が増えています。そうした状況が長期化すると考える医師も多く、お金やライフプランについての意識にも変化がみられます。これまでは、“子どもも医師に”と考える医師が多く、私立大医学部も想定されていましたが、必ずしもそうでなくてもいいと考える医師も増えており、意識が変化しつつあることを感じます」

一方では、長寿化において老後資金を準備する必要性も高まっている。収入不安や、教育費、老後資金などの準備について、どのような計画が必要だろうか。

まず実践したいのが、預金を厚めにしておくことである。一般的に、病気や収入ダウンなどに備えて生活費の6カ月分程度は予備資金として確保する必要がある。医師は生活水準が高いことや、収入やキャリアプランの変化に柔軟に対応するためにも、「1000〜2000万円程度は確保しておきたいところです」。

また「収入が伸び悩んだとしても、長く働くことで、総収入を維持することができます。60代以降も働くためのキャリアプランや健康維持も、お金計画において重要な視点です」

専業主婦家庭の場合は、夫婦共働きにすることも考えたい。藤川氏は、「勤務経験のある配偶者も多いので働かないのはもったいない。短時間でもいいので、能力を活かして仕事を持つ。収入の柱を2本にしておけば家計の安定感が増します」と話す。

今後どのようなお金がかかり、どう準備すべきか。医師ならではのポイントを含め、解説したい。

  • 人生100年時代のお金の基本

人生の3大支出は教育、住宅、老後。
いくら必要なのか目安を把握し、
予算を決めて使う、準備する

教育費

高校までは家計から捻出
大学費用は計画的に準備

教育費は、医師を目指すかどうか、また国公立コースか私立コースかで金額が大きく異なる。

図表1は幼稚園〜高等学校までの教育費の目安である。私立と公立では金額差が大きく、私立の場合、小学校では年間約160万円、中学では約140万円と、かなりの額になる。子ども2人が私立小学校では、教育費は年間で320万円にのぼる。

大学では、国立の医学部と、私立の医学部では大きな違いがあり、国立では6年間で約350万円、私立では平均で約2360万円となっている(図表2)。さらに医学部に入学するための予備校に通う場合などでは、さらに負担が上乗せされる。

基本的には、高校まではその時々の収入から拠出し、大学でかかる費用については収入から負担できない分を計画的に準備していくのがセオリーだ。仮に2000万円を18歳までに準備するには、年平均110万円程度を積み立てていく必要がある。

「教育費は聖域と位置づけ、受験準備や習い事などにもお金をかけがちですが、大学費用の準備もできる範囲で、年間の教育費の上限を考えることが重要です」

図表1● 教育費の目安(幼稚園~高等学校) (単位:円)
1年間の費用 在学期間計
公立幼稚園 223,647 670,941
私立幼稚園 527,916 1,583,748
公立小学校 321,281 1,927,686
私立小学校 1,598,691 9,592,146
公立中学校 488,397 1,465,191
私立中学校 1,406,433 4,219,299
公立高等学校(全日制) 457,380 1,372,140
私立高等学校(全日制) 969,911 2,909,733
(注)保護者が支出した1年間・子供1人当たりの経費(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)。在学期間計は編集部で在学期間を掛けて算出。幼稚園は3年保育で計算。
出典 : 文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」
図表2● 大学費用の目安 (単位:円)
入学金 授業料 施設設備費 初年度納入金 在学期間合計
国立大学※1 282,000 535,800 ※2 817,800 2,425,200
国立大学医学部※1 282,000 535,800 ※2 817,800 3,496,800
私立大学文系 229,997 785,581 151,344 1,166,922 3,977,697
私立大学理系 254,309 1,105,616 185,038 1,544,962 5,416,925
私立大学医学部 1,340,552 2,666,458 1,063,310 5,070,319 23,719,160
(注)在学期間合計は編集部で在学期間を掛けて算出。医学部は6年、他は4年で計算。
※1 : 文部科学省令による標準額 ※2 : 大学により徴収される場合あり
出典 : 国立大学/文部科学省データより。私立大学/文部科学省「平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査

住居費

返済はいつまでか。
修繕費用の予算も立てる

「医師は家と車にお金をかける傾向があります」と、藤川氏。

住宅ローンを組んでいる場合は、完済時期が何歳の時か、60代以降かなど、収入が変化しても返済が可能かを確認したい。また定期的にリフォーム(修繕)や設備の交換なども必要であり、人生100年時代ではその回数、費用も多くなる。そうした予算も考えておく必要がある。

老後資金

ベースとなる公的年金を確認
いくら不足するかを把握する

老後は公的年金と自身の資産で暮らすことになるが、藤川氏は、「医師の老後は資産が1億円あっても安心とは言い切れない」と話す。

「高齢夫婦の平均消費支出は月25万円程度ですが、医師は毎月の生活費が70〜80万円という例も珍しくありません。現役時代の収入が高いため公的年金も多めですが、それでも専業主婦の妻との合計で300万円程度が目安です。年金で不足する額が年間400万円とすれば、70歳まで働いても、95歳までの25年間で1億円が不足。ほかに医療・介護費や、自宅のリフォーム費用などが必要です」

生活水準などによって必要額が異なるので、図表3で計算してみたい。

年間の生活費については、現在かかっている生活費をベースに想定する。一般的に、リタイア後の家計支出は現役時代の7割程度と言われている。現在の支出から教育費を引くなどして考えるといい。

年金については、毎年、誕生月に郵送される、「ねんきん定期便」で確認できる(図表4参照)。

50歳未満ではこれまでの加入実績に応じた年金額(今後継続加入することで年金額は増える)、50歳以上では現在の加入状況が60歳まで続いた場合の年金額が記載されている。

注意したいのは、記載されているのは支給額であり、そこから税金や社会保険料が引かれることである。「現行の水準では税金と社会保険料で13〜17%程度が目安。負担が増す可能性もあり、20%弱を見込んでおくといいでしょう」(藤川氏)

年間の生活費から、公的年金の額を引いた額が、生活費の不足額であり、95歳程度までの年数を乗じたものが、生活費として準備しておきたい額となる。ここに、リフォーム代や医療・介護費、高齢者施設への入居費用など、生活費とは別に必要な額を加えたのが、リタイアまでに用意したい額だ。退職金や任意で加入している年金(保険医年金や個人年金保険など)があれば、必要額から差し引ける。

「医療・介護費を見積もっていない医師が多いですが、公的年金その他の収入や資産が多い場合、医療費や介護保険のサービス利用料の負担割合が高くなることも念頭に置きたいところです。有料老人ホームに入居する場合、高額なところでは入居一時金が3000万円〜5000万円という例も少なくありません」

ここからもわかるように、公的年金は老後資金のベースになる。生涯受け取れる終身型のため、人生100年時代には長生きに対応する頼もしい存在と言える。受給開始年齢は生年月日によって異なるが、受給開始時期は任意で繰り下げることができる(図表5)。1カ月遅らせる毎に年金額が0・7%増額され、増えた額が一生涯支給される。現行で繰り下げられるのは70歳までだが、2022年からは最大75歳まで繰り下げでき、最高で84%の増額となる(注)。

「現役を長く続けて収入を得て、年金は繰り下げによって額を増やすのも人生100年時代の有力な選択肢です。医師はほかの職種と比べると高齢になっても高水準の収入が得やすく、現役を長く続けることが、老後の有力な準備にもなるわけです」

(注)繰り下げ受給で、厚生年金に加入し在職老齢年金の支給停止となる部分は、繰り下げても増額されない。

図表3● リタイアまでに用意しておきたい老後資金の計算式
図表4● ねんきん定期便
出典 : 日本年金機構『「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド』
図表5● 年金の繰り下げ受給のイメージ図
  • 人生100年時代のお金の対策

どんなペースで、どの商品で貯めるか。
高収入の医師は節税メリットも意識、
シンプルで低コストの商品を使う

お金計画の立て方

家計を見直して
より多く積み立てる

教育費や老後資金の準備では、「どんなペースで資金を積み立てるか」、「どの金融商品を利用するか」の2つを考えることが基本となる。

ペースについては、目標額と目標達成時期から1年間で積み立てる額を検討する。図表6にあるように、20年で1億円を用意するには月額42万円、年間500万円を貯蓄する必要がある。収入が多い時期、教育費負担が重い時期など、収入や支出には波があるので、その時々でメリハリをつけ、貯められるときにしっかり貯めるというスタンスが重要だ。

積立額を増やすには、家計の現状や、年間でどの程度を貯蓄に回しているかを把握する必要がある。

「家計簿をつけて収支を把握している医師は少なく、よくあるのが、自身の認識と実際に使っている額が一致しない、夫婦に認識のずれがある、というケース。収入が多いわりに貯蓄が少ない、ということになりがちです。いくら貯めるべきか、そのために支出をどう抑えるか、夫婦で目標を共有したいところです」

また、運用利回りの高い商品で積み立てをすれば貯蓄すべき額は少なくて済む。20年で1億円を用意する場合、年利0%では年間500万円の貯蓄が必要なのに対し、年利2%なら年間408万円で達成できる。

図表7にもあるように、積み立てる期間が長いほど利回りによる効果が大きくなる。額が大きければ、少しの利回りの差でも大きな違いを生むことも認識したい。

図表6● 1億円積立早見表 (単位:万円)
貯める年数 1ヵ月貯蓄額 年間貯蓄額
10 83 1,000
11 76 909
12 69 833
13 64 769
14 60 714
15 56 667
16 52 625
17 49 588
18 46 556
19 44 526
20 42 500
20 34 408
(注)最終行以外は利回りを考慮せず。
※ 20年間利回り2%で積み立てた場合、1カ月の貯蓄額34万円で10,023.1万円になる。
図表7● 毎月10万円積み立てた場合の利回りによる運用成果の違い
出典 : 金融庁「資産運用シミュレーション」を使用し編集部にて計算

目的によって預け分け

流動性、安全性、利殖性。
資金を3つに分ける

少しでも有利な商品で効率よく運用したいところだが、商品選びの前提として重要なのが、金融資産を、【流動性資金・安全性資金・利殖性資金】に分けることである。

生活費や臨時の支出に備えるお金は流動性資金として、いつでも引き出せる普通預金などで管理する。教育費や住宅購入の頭金など、減っては困るお金は安全性資金として定期預金などに預ける。そして、老後資金など、使う時期がまだ先の資金は、利殖性資金として投資信託などの投資に振り向ける。

こうした分類をしておくことで、安全性も重視しながら、効率的に運用することができるのだ。

安全性資金の運用先としては定期預金が定番だが、超低金利下では、0・002%(メガバンクの例)などの低水準にとどまる。

1年以上運用できるなら、銀行、証券会社などで1万円から購入できる「個人向け国債」も選択肢にしたい(図表8)。固定金利型もあるが、高金利時には固定型、低金利時には変動型を選ぶのがセオリーで、現在の選択肢は「変動10」。0・05%の最低保証があるため現状では定期預金より高く、変動10なら、金利情勢によって金利上昇の可能性もある。10年満期だが、1年以上経過していれば中途解約でき元本割れしない。毎月発行されているので、教育費として準備したい額から毎月積み立てるべき額を計算し、毎月、継続して購入するのもいいだろう。年に2回、利息が支払われるので、教育費用の口座を作り、そこに振り込まれるようにすれば、ほかの目的で使ってしまうことも避けやすい。

「大学入学時などに学資金が支払われる学資保険の利用も目立ちます。短期払い終身保険や、外貨建て終身保険を教育費づくりに利用している医師もいますが、保障のためのコストがかかるほか、為替リスクなども伴います。シンプルな金融商品を使うほうが望ましいです」

そうした保険に加入している場合は、必要性の低い特約が付加されていないかを確認し、不要と判断できる特約を外すことも検討したい。

図表8● 個人向け国債の商品概要
商品名 変動金利型10年満期 変動10
特徴 実勢金利に応じて半年毎に適用利率が変わるため、受取利子が増えることもある。
満期 10年
金利タイプ 変動金利
金利設定方法※1 基準金利×0.66※2
金利の下限 0.05%(年率)
利子の受け取り 半年毎に年2回
購入単価(販売価格) 最低1万円から1万円単位(額面金額100円につき100円)
償還金額 額面金額100円につき100円(中途換金時も同じ)
中途換金 発行後1年経過すれば、いつでも中途換金が可能※3
直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれる。※4
発行月(発行頻度) 毎月(年12回)
(注)※1受取時に20.315%分の税金が差し引かれる。 ※2 基準金利のルールはHP確認を。 ※3 特例あり。詳細はHP確認を。※4 詳細はHP確認を。
出典 : 財務省「個人向け国債・商品概要」

投資で効率的に増やす

節税メリットのある制度で
有利に、確実に積み立てる

老後資金など、必要となる時期まで時間がある資金については投資によって効率のいい運用を目指したい。

「医師は仕事や研究に多忙であり、投資のために時間をとるのは難しいという状況があります。また高収入ゆえ、金融機関から勧誘を受けることも多い。積極的に売り込まれる商品は、相手にとって旨味がある高コストの商品である可能性もあります。シンプルで低コスト、手間いらずの投資信託などを活用すること、また節税効果がある制度の活用がおすすめです」

具体的な候補には、「つみたてNISA」や、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」がある(図表9

つみたてNISAとは、年間40万円を上限に最長20年間、投資信託などを積み立て購入していくもの。通常、運用で得た分配金や売却益には約20%の税金がかかるが、最長20年間、非課税で投資できる。対象となるのは、金融庁が指定した基準を満たした投資信託やETFで、低コストで、長期投資に適すという基準で選定されている。

またiDeCoは、老後資金づくりのための制度で、一定の範囲で資金を拠出し、金融機関が用意した預金、保険、投資信託から自身が選んだ商品で運用し、原則、60歳以降に年金や一時金として受け取る。特徴は拠出した額を全額所得控除でき、所得税や住民税が軽減されることである。

拠出できる額は働き方や勤務先の退職金の制度などによって異なり、自営業であれば月額6万8000円、勤務先に企業年金がなければ同2万3000円などとなっている。月額6万8000円を拠出した場合、所得税率が23%(課税所得695万円超900万円以下)の医師では、年間で約27万円、税が軽減される(住民税10%の例)。高所得の医師ほど効果が大きく、節税しながら、老後資金の準備ができる、というわけだ。

現行、拠出は60歳までだが、厚生年金加入者などでは2022年以降、65歳までの拠出が可能となる。

図表9● NISA・つみたてNISA・iDeCoの概要
NISA つみたてNISA iDeCo
掛金(投資額)上限/年 120万円 40万円 ※職業、加入年金制度により異なる
運用期間 最長5年間
(口座開設期間2023年まで)※1
最長20年間
(口座開設期間2037年まで)
加入〜60歳未満
(延長10年可能)
対象商品 上場株式・投資信託・ETFなど 一定の要件を満たした投資信託等 定期預金・投資信託・保険
掛金への所得控除 なし なし あり
運用時の課税 なし なし なし
途中引き出し 自由 自由 原則60歳まで不可
受取時の課税 なし なし あるが優遇※2
(注)※1NISAは2024年から「新・NISA」となり、年間20万円までの積み立て投資枠、年間102万円までの投資枠の2階建てに変更される。新・NISAの口座開設可能期間は2024~2028年。  ※2受取方法が年金なら公的年金等控除、一時金なら退職所得控除の対象。

多忙な医師は
手間のかからない商品で

つみたてNISAやiDeCoの商品選択について藤川氏は、「多忙な医師はバランス型投信を候補にするといいでしょう」と助言する。

バランス型投信とは、国内外の株式や債券、リート(不動産)など、幅広く分散投資する投資信託で、さまざまな資産に投資することで価格変動リスクが抑えられる効果が期待できる。各資産への投資比率も一定に保たれるので、手間をかけることなく、分散投資が続けられるわけだ。

iDeCoは口座管理手数料がかかるので、大手ネット証券など、低コストの金融機関を選びたい。

そのほか、多くの証券会社や銀行には、毎月一定額で指定した投資信託を継続的に買い付けるサービスがある。こうした自動積み立ての仕組みを使えば確実に資産形成できる。

さらに、年間120万円を上限に株式などに投資でき、利益が非課税になる「NISA」という制度もある。つみたてNISAとの選択制なので、ニーズに合う方を選びたい。

不動産投資への関心が高い医師も多いが、「継続的に利益を得るには、物件選びなどに時間をかける必要がある。多忙な医師にはハードルが高く、手間と時間がかけられるかを慎重に検討した方がよさそうです」

節税

祖父母の資金も有利に活用
ふるさと納税は節約効果も

教育費の準備として知っておきたいのが、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」である(図表1011)。30歳未満の孫に教育費を非課税で1500万円まで一括で贈与できる。資金は信託銀行に信託し、そこから授業料などを払う。払出しの都度、手続きが必要で煩雑な面もあるが、祖父母に判断能力があるうちに、教育費の贈与を受けられるメリットがある。30歳時点で残った資金は贈与税の対象になるなどの注意点を確認のうえ、活用を検討したい。制度は2021年3月の終了予定が、2年間延長される見込みだが、条件等が厳しくなるとみられている。

「ふるさと納税」もメリットが大きい(図表12)。応援したい自治体などに寄附をすることで、寄附金のうち、2000円を超える部分について所得税と住民税が控除されるほか、返礼品として地域の名産品などを受け取れる。所得が高いほど2000円の実質負担で寄附できる額が多くなり、食品、日用品などの返礼品を受けるなどすれば家計費が抑えられる。

「相続対策もしておきたいところ。教育費や老後資金の準備、資産運用などを含め、信頼できるお金のホームドクターを持つのも効果的です」

図表10● 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置の概要
出典 : 文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について」(令和2年10月1日現在)
図表11● 教育資金とは
学校等へ直接支払 ①入学金、授業料、施設設備費等
②学用品費、修学旅行費、学校給食費等、教育に伴う必要な費用等
学校等以外 役務・指導先へ
直接支払
③教育(学習塾、そろばん等)の役務提供対価や施設使用料等
④スポーツ、文化芸術(ピアノ等)、その他教養向上活動の指導対価等
⑤③の役務提供または④の指導で使用する物品の購入のための金銭等
物品購入等 ⑥②に充てるための金銭で、学校等が必要と認めたもの
⑦通学定期券代
⑧留学渡航費、入学・転入等のために必要となった転居の際の交通費等
出典 : 文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について」(令和2年10月1日現在)から編集部が抜粋・加工
図表12● ふるさと納税のしくみ
出典 : 総務省「ふるさと納税ポータルサイト」