北海道大学病院 脳神経外科 先輩医師に聞く ここから描けるキャリア

基礎研究もこなしつつ一流の術者のもと外科医としての階段を上る

家族の病気を機に脳神経外科医の道に進んだという東海林菊太郎医師。研修医としての日々を振り返っていただくとともに、チーフレジデントの役割や北海道大学病院脳神経外科における5年目、10年目医師のキャリアプランについても伺いました。

一流の技術を持つ上級医に学び
脳神経外科医として成長

北海道大学病院
脳神経外科 医員
東海林 菊太郎先生

東海林先生が北海道大学病院脳神経外科に入局した経緯を教えてください

私は北海道のオホーツク海に近い遠軽町の出身で、2010年に北海道大学医学部を卒業しました。卒業後は、一度大学を離れて苫小牧市立病院で初期研修を受けました。大学に戻ることが前提でしたが、地元に戻ることも数ある将来の選択肢のひとつだったため、地域の中核病院でcommon diseaseの診療を経験することも大切だと考えたからです。そのなかで苫小牧市立病院は、内科系、外科系ともに充実していて指導が受けやすく、症例数が多く経験できる環境だったことが決め手でした。どの診療科も北海道大学の医局とのつながりがあったことも大きな理由でした。

入局先は初期研修2年目のときに決めました。医師を志したのが、祖母がくも膜下出血、祖父が脳梗塞、父が頭部外傷を経験したことがきっかけだったこともあり、脳神経外科は当初から考えていた診療科でした。一方で、脳神経外科は多忙で難易度の高い手術も多く、敷居が高いイメージが強かったのも事実です。症例数が多く、体力的にも技術的にも不安はありました。それでも初期研修の2年間で、脳神経外科医のニーズの高さを実感していましたし、手術も数多く経験するなかで、レベルアップができていると感じられました。不安があるからといって妥協するのではなく、医師になりたいと思ったきっかけをくれた診療科に行きたいと思い、脳神経外科に入局しました。

北海道大学病院脳神経外科はどんな医局ですか

脳神経外科は大きな医局ですが、1学年0〜4人程度で医局員全員と知り合いになれる、ほどよい人数だと思います。すぐに上級医の先生とも打ち解けることができました。3年目に入局して一番感じたのは、一人前の脳神経外科医になるためには多くの経験が必要だということです。大学は一流の技術を持つ医師が揃っていますので、多忙ではありますが、それに見合う経験ができる場だと感じました。

医局はまとまりがありながら自由度の高さも感じます。もちろん100%自分の希望だけを通すことはできませんが、意見も聞いてくれますし、サブスペシャリティを自分で選択できますので、自分次第でいろいろな道を切り開いていくことができると思います。

また、大学ならではの稀少な疾患や難病の治療、難易度の高い手術を一流の技術を持つ医師から学ぶことができる点は大きな魅力だと思います。多くの症例を経験することで、より一層大学の脳神経外科医の技術の高さが理解できるようになったと思います。

北海道大学病院脳神経外科での後期研修について教えてください

後期研修医は病棟班に入って大学と連携施設で研修を受けます。研修期間や順番はそれぞれ異なりますが、私は大学で半年、連携施設の札幌麻生脳神経外科病院で1年、大学で半年、柏葉脳神経外科病院で1年、最後の1年は大学で、うちチーフレジデントも半年務めます。最速でチーフレジデント修了後の6年目に脳神経外科専門医の受験資格が得られます。

チーフレジデントは、後期研修の統括、手術の人員配置や医療機器の手配などのアレンジメント、入院患者さんのアレンジメントなどの調整を行い、すべての手術に入ります。後期研修医のサポートや第一助手、執刀医と、必要に応じてあらゆる役割を担います。病棟にいる時間が最も長いのがチーフレジデントで、いま振り返ると、脳神経外科医としての対応力を身につけるために必要な濃密な時間だったと思います。

5年目、10年目のキャリアプランを教えてください

5年目は後期研修中で、大学もしくは連携施設で2回目の研修を受けている頃で、6年目に大学でチーフレジデントとなります。チーフレジデントが修了すると、多くの研修医は大学院に入ります。大学院進学は希望者のみですが、教室が伝統的に基礎研究を大事にしていることもあり、私も学年が近い先輩方から「大学院は絶対に入ったほうがいい」と勧められました。基礎研究に携われることで、医学を異なる視点からみることもできますし、論文執筆や海外の学会への参加の機会にも恵まれました。今年で大学院4年目に入り、基礎研究もまとめの段階に入っているので今は臨床がメインですが、実験で多忙な時期には臨床を減らしてもらうなど、長内先生にはきめ細やかに配慮していただきました。大学院は想像していた以上に大変でしたが、研究に必要な論文を多く読むなかで、これまで多くの先生が行ってきた基礎研究の積み重ねが医学の進歩につながっていることを実感できました。

私の基礎研究は、iPS細胞 を用いてもやもや病の病態を探ることがテーマです。もやもや病は当科で力を入れている病気のひとつですが、原因不明の難病です。私自身も臨床でもやもや病の患者さんを診察してきたので、その病態に焦点を当てた研究には高い関心を持って取り組むことができました。

10年目は大学院にいることも多いですが、大学院修了後は大きく分けて教員として大学に残る、連携施設で手術経験を積むという2つの選択肢があります。なかでも連携施設で手術経験を積む人が多いのではないでしょうか。その後留学を考えている人は、その間に準備を進めます。

私は10年目に入り、今後についての面談が始まったところです。まだ先のことは決まってはいませんが、もっと手術経験を積みたいと考えているので、一度連携施設に出ると思います。また、チャンスがあれば留学にも行きたいと思っています。

臨床医として日々心がけていることを教えてください

一人ひとりの患者さんに対して、家族などの背景を含めて最適な治療は何かを考え、患者さんや家族にとって最善の選択ができるように説明にできるだけ時間をかけるようにしています。それが患者満足度につながると考えていますし、患者さんの満足度が高いことが私自身のモチベーションにもなります。

私自身も家族の病気を経験し、患者さんや家族への説明の大切さは実感しています。たとえば、くも膜下出血の患者さんや家族に対して私自身の“家族”としての経験を話すこともあります。

最後にメッセージをお願いします

北海道大学脳神経外科は、若手医師一人ひとりとの面談を大切にしてくれ、意見を聞いてくれる医局ですし、最近は医局をあげて女性の脳神経外科医の入局も歓迎しています。近年、女性医師の入局も増えていますし、男女問わず一律の教育システムでしっかり学ぶことができる環境が整っています。

北海道は自然が豊かでどの連携病院に赴任しても住みやすく、北海道大学も札幌市の中心部にありがならキャンパス内が四季折々の自然にあふれていてとても気持ちがよい場所です。また、大学病院や連携施設の医師で野球チームを結成し、脳神経外科学会主催の大会などにも出場していますので、野球好きの人もぜひ来ていただきたいと思います。

2019年6月掲載

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