緩和ケア病棟長 高橋 裕二 写真

日本で数少ない「非がん領域の緩和ケア」の担い手として

医療法人社団聖仁会 横浜甦生病院

緩和ケア病棟長
高橋 裕二

  • 1997年
    山形大学医学部卒業、医学博士
  • 2008年
    兵庫医科大学非常勤講師
  • 2011年
    東札幌病院緩和ケア研修修了
  • 2011年
    ニューヨークカルバリー病院緩和ケア研修修了
  • 2013年
    医療法人社団聖仁会横浜甦生病院緩和ケア病棟長就任

日本透析医学会専門医、日本泌尿器科学会専門医、日本がん治療認定医

透析患者にも緩和ケアは必要になる

透析患者にも緩和ケアは必要になる

 泌尿器科と腎不全外科を専門としていた私は、若手の頃から透析患者にかかわることが多くありました。中でも末期腎不全に至った高齢者と接するうち、「がんでない分野にも緩和ケアが必要なのでは?」という問題意識が起こってきました。そこで、日本における緩和ケアの草分け的存在であった医療法人東札幌病院で研修を受け、さらにニューヨークカルバリー病院で緩和ケアの最先端を学びました。帰国後はすぐ当院に入職し、人工透析科および緩和ケア科の医師として診療に当たっています。
 腎不全領域でもがん領域でも、もう回復は見込めない状態に至ってしまった患者をケアする役割はとても重要です。しかし、特に透析患者の緩和ケアについては、いまだ広く知られているとは言いがたい状況ですね。これから関心が高まってくることを期待しています。
 末期になればなるほど、神経障害や糖尿病性の痛みが生じるうえ、呼吸困難や精神関連症状が出ることもあります。漠然と透析を続ければいいというのではなく、苦痛症状を取り除くことを重視し、場合によっては透析を見合わせることもあります。透析を中止すれば1~2週間で患者さんが亡くなるケースが多いため、いかに安らかに看取るかという点に焦点が絞られます。ご家族の精神的ケアも含めて、QOLを重視した全人的な対応が求められる仕事です。

「やりがい」ではなく「使命感」が原動力

 日本における緩和ケアの問題として、がん患者と非がん患者で区別をしなければならないということが挙げられます。非がん患者の場合は保険適用される薬剤の種類が少なく、医療用麻薬も一部しか使用できません。また、「がん」という病名が付いていなければ、緩和ケア病棟に入ることすらできないのです。当院でも、透析患者さんの緩和ケアを行うのは一般病棟となっています。
 その点アメリカでは、病気の種類によらず「末期患者」というくくりがあり、同じフロアに様々な病名の患者が混在していました。また、薬剤の使用についても病名による制限はありませんでした。帰国してから、日本では制度上の縛りが強すぎると感じることもありますが、なんとかその中で良いケアをすることに力を尽くしています。
 この仕事に、例えば「難しい手術に成功した」「子どもの命をつないだ」というような、分かりやすいやりがいを見出すのは難しいかもしれません。しかし、苦痛に顔で歪んでいた患者が穏やかな表情になったり、ご家族から「最期に苦しまなくて済み、私たちも救われました」という言葉をいただいたりすると、やはり必要な役割なんだと実感しますね。
 また当院では、頼れる身内がいない方、高額な医療費を支払うのが難しい方、生活保護の方などを引き受けるケースもあります。医療的にも社会的にも窮地に追い込まれている方を救うという意味でも、強い使命感を覚えます。

終末期医療を共に考える仲間に期待

終末期医療を共に考える仲間に期待

 当院は、建物こそピカピカの新品ではありませんが、中で行っている治療に関しては自信があります。また、地域にとって重要な役割を担っている点も特徴です。
 例えば当院は、在宅医療を受けているがん患者の救急搬送先となっています。昨今は在宅医療が大きな注目を浴びており、当院でも地元のクリニックなどと連携を取りながら在宅で過ごせるように支援を行っています。しかし実際には、自宅で診きれないほど悪化して救急搬送されたり、そもそもご家庭の介護力が足りずに診きれなかったりするケースも多いものです。そんなとき、すぐに受け入れられる場所が少ないのが日本の医療現場の大きな問題の一つだといえます。当院では、がん患者や透析患者を可能な限り早く受け入れる努力をしています。
 規模は小さな病院ですが、決して勉強できることが少ないわけではありません。特に、慢性期医療、終末期医療、緩和医療に興味がある医師には、とても学びの多い現場だと思います。緩和ケアの具体的なノウハウは教授しますので、人間はどのような最期を迎えるべきか、終末期医療を一緒に考えていけるような方を求めています。透析患者の診察を行っていますが、泌尿器科、腎臓内科が専門ではない方でもかまいません。

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※2015年9月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございますので、予めご了承ください。

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