優良物件と出会うには、十分な立地選定が大前提
医院の物件選定には、テナント、戸建て、医療モールなどの選択肢がある。自院の診療コンセプトが、都心の駅前やオフィス街の患者をターゲットとするなら、テナントを選ぶのが一般的だ。日本医業総研の植村智之氏は、選び方の注意点についてこう説明する。
「多くの不動産業者に出回っているのに長期間空室だったり、やけに賃料が安かったりする物件は、何らかの瑕疵があるか、入居条件が厳しいなどの可能性が考えられます。給排水、電気容量などがクリニックに適応しているかも確認が必要です」
戸建ての場合は2パターンの方法がある。一つは、自分の土地に自分で建物を建てる方法。もう一つは、土地のオーナーに建物を建ててもらい、そこを借用する「建て貸し」で、昨今、郊外を中心に増加している。
「少し都心を離れると、駅前は寂れていて大規模商業施設の近くに店舗が集まっています。そうしたエリアはテナントが少なく、駐車場や更地になっている土地が多い。建て貸しは、土地オーナーと交渉して医院を建ててもらい、そこに入居するのです」
ある内科医は、希望エリアにドラッグストアの新規建築の計画があった。当初、全フロアが店舗の予定だったが、同社のコンサルタントが交渉して一部を医院にしてもらった。医院もドラッグストアも、堅調に経営しているそうだ。
「医師にとって建て貸しの最大のメリットは、土地建物の購入費用が不要なことです。土地は固定資産税が課税され、減価償却の対象外で経費化もできないため、事業上のメリットも出てきます」
自身の土地に医院を建てる場合には、自宅兼用とするケースがある。自宅を改装すれば費用を抑えることができるが、拙速な判断は禁物だ。
「初期費用が安く済んでも、売り上げが低ければ経営は厳しくなります。自宅のエリアでどれだけ売上予測が立つか、十分な現地調査が不可欠です」
医療モールに関しては、玉石混淆と言えそうだ。駅前など目立つ位置に建っていることが多いが、最近では乱立気味で集患が難しいモールもある。
「複数の医院の入ったモールは安心感があるかもしれませんが、周辺に競合医院が多かったり、入居コストが高かったりするところは要注意です」
もう一つ、物件選定の段階で検討したいのが事業承継物件だ。初期投資が少なく済み、患者もすでについているなどのメリットがあり、今後、増加が見込まれる。ただ、用心が必要だ。
「まず、承継元の医師と診療内容が合致するか。また、昔からある医院は建物が古く、患者も離れていることがあります。承継だけにこだわらず、新規開業プラス、一つの選択肢として承継を考えるほうが現実的です」
なお、いずれの物件の場合でも、失敗しないためには診療コンセプトに合った立地選定が大前提だ。「エリアを絞り込むことで、通常は非公開の優良物件の情報が得られ、前述のように土地オーナーや承継物件の交渉ができるようになります」
- 建て貸し
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- 商業施設内テナント
- 都市開発案件
- 植村 智之氏
- (株)日本医業総研 東京本社 シニアマネージャー
- これまで約400件のクリニック開業を成功に導いた東京本社の責任者。自身も60件超の開業案件を手掛けている。無理なく事業が軌道に乗る資金計画に定評がある。
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