「オープニングスタッフは医院の風土を作るメンバーです。対応が悪い人材を採用してしまうと医院のイメージを損ないますから、採用面接は慎重に」
日本医業総研の植村智之氏はこうアドバイスする。
人材募集を始めたら、履歴書を郵送してもらい、書類選考をする。開業後、うまくシフトを組むために、希望勤務時間帯が重ならない人を20〜25人ほどに絞り込み、面接に来てもらう。書類選考のポイントは、短期の転職が多い人を避けることと、患者層に合った人を選ぶことだ。
「小児科なら子育て経験者、高齢者中心の内科は若手よりも40代以上の人がいい場合があります」
いざ面接の段階では、前の職場の退職理由を忘れずに聞くこと。院長に評価されない、他のスタッフと合わないなど、他人のせいにする人は避けよう。他に、家庭背景も要確認だ。介護や子育て中の人は、夜の診療が延びた時に対応できるかを質問する。
勤務時間の下限、上限も確認したい。開業当初は患者が少なく、勤務時間が短くてもよい日もあるからだ。
「勤務時間の減少は収入が減るから困るという人もいれば、逆に、扶養の範囲を上限に働きたい人もいます。面接時に仮のシフトを組んでみて、うまく回らないなら再度募集をかけます」
看護師に関しては、高度な能力を持っていることよりも、自院で求める業務に合っているかが重要だ。
「例えば、ある心療内科では看護師が電話受付の段階で簡単な問診をして、予約を調整しています。また、ある小児科は、看護師が待合室で患者の症状を観察し、必要に応じて診察順を入れ替えています。どこまで看護師に任せるかを意識して、人選してください」
また、必ずしも経験者にこだわる必要はない。受付スタッフのうち、1人は医療事務経験者が必要だが、他は人柄を優先したほうがいい。
「電子カルテが普及した今、未経験でも問題ありません。逆に、医療事務の経験が長いと、前の職場での癖がついていて、新しい医院になじめない可能性があります。接客など他業界の経験を持ち、接遇に長けた人を採用したほうが他院との差別化につながります」
なお、開業前に勤めていた病院からスタッフをスカウトする場合でも、一般応募者と同じように面接をする。
「入職後も特権意識を持たず、他のスタッフと平等に働いてもらうためです」
採用が決まったら、綿密なオリエンと研修
開業1ヵ月前には採用する人を決め、オリエンテーションを開く。顔合わせと、雇用内容の確認、院内の案内、院長の経営理念を伝える場だ。初日に全員で昼食をとるケースも多い。
「スタッフ同士が雑談をする様子から、リーダーシップをとりそうな人、仲良くなりそうな人の見当をつけ、その後の運営に生かします。ここから院長としてのマネジメントが始まるのです」
その後、1週間ほどかけて研修を行う。電子カルテなどの操作、接遇、診療の流れをシミュレーションする。
「患者を『さん』づけにするか『様』づけにするか、診察室に誘導するのは誰かなどを決め、スタッフで患者役をたてて練習し、開業に臨みます」
選考のポイント
〈書類選考〉
- シフトを組みやすい希望勤務時間帯
- 短期の転職を繰り返していない
- 患者層に合った年齢層
〈面接〉
- 前の勤務先の退職理由
- 人柄、接遇
- 家庭背景
- 勤務時間の下限、上限
- 植村 智之氏
- (株)日本医業総研 東京本社 シニアマネージャー
- これまで約400件のクリニック開業を成功に導いた東京本社の責任者。自身も60件超の開業案件を手掛けている。無理なく事業が軌道に乗る資金計画に定評がある。
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